春。
花壇には色とりどりの花が咲き乱れている。
大きな桜の木も、立派に咲き誇っている。
淡いピンク色の花びらが、雲ひとつない青空を舞う。
…こんな景色を見ていると、数年前…私がまだ小学生だったときに起こった、あの忌々しい事件のことも忘れてしまいそうだ。
…いや、忘れていた。
だって。
中学に入っても何も起こらなかった。
人ひとり死にやしない。
殴り合いの喧嘩はたまにあったけど、それ以外は平和だった。
いじめもない。
番長も居ない。
杏奈ちゃんと早織ちゃんも、何故か おとなしかった。
みっちゃんや亀井くん、そして桜井先生も現れなかった。
だから、私は忘れていた。
自分が人を、2人も殺めたこと。
そう。
高校に入学して、1ヶ月が過ぎるまで――…