――……それから数時間後。


仕事を終えたあたしは、以前教えてもらった住所を頼りに、疾風の住むアパート前に立っていた。


夜になり、急に下がった気温のせいで、指先が冷たい。


でも、朱音が言うには、これも1つのポイントらしい。


上手くいくかなんて分からないけど、今はそれに掛けるしかない。


腕時計を見ると、7時をちょっと回ったところ。


……もうすぐ、バイトを終えた疾風が帰ってくる時間だ。


あたしは、高鳴る胸を押さえながら、『小田切』と書かれたプレートを見つめた。