ついこの間、道端に咲く小さな花に穏やかな春の息吹を感じたと思っていたのに。


気付けば暖かな光を照らし出していた優しい太陽が、今は鬼のように熱く強く肌を焦がしてくる。


「かーっ!今日もアチイな!夏最高!」


夏生まれの俺は、季節の中でやっぱり夏が一番好きだ。


「夏、テンション高いよ。僕には日差しがキツすぎて最悪だ…」


営業から会社に戻る途中でばったり会った冬が、少し夏バテ気味の声を出している。


「とりあえずお前も黒くなれ!このまんま色白美少年路線だと、あの灼熱の太陽とは戦えないぜ!」


「…普通戦わないよ。太陽なんかと」


そんな調子で並んで会社に戻ると、いつもの声が俺達を迎えてくれた。