今日も頭の中で響く
お坊さんのお経、

でも今日は違う


隣にはお母さんがいる


家族みんなで

とはならなかったけど
お兄ちゃんの遺影は
昨日より嬉しそうに見えた



「お兄ちゃん。
お母さん来たよ。
お父さん連れてこれなくてゴメンね。」

お線香を上げる時
お兄ちゃんに声をかけた

―――ありがとな

お兄ちゃんの声が聞こえた気がした

やばい
泣きそうだ


次にお線香をあげる
お母さんが私の
背中をそっとさすってくれた

お線香を上げるお母さんの姿が涙でにじんだ

ゆっくりゆっくりと
時間をかけながら
お線香をあげるお母さん

「……わたる、
ごめんね。
ごめんなさい。
わたるゆっくり休んで下さい」

お兄ちゃんの遺影に話し掛けるお母さんの声は震えていた


椅子に戻ったお母さんと
涙が枯れるまで
泣いた

手を繋いで
泣いた

泣いて
泣いて
泣いて
泣いて

遠回りしたけど
親の愛って深い物だ
って初めて感じた

―――ガチャ…

お経とすすり泣く声以外
音が無かった葬儀場に
ドアが開く音が響いた


みんなの視線が
一気にドアに集中する



……!?



お父さん!?



事情を知ってる親戚が少しざわめいた

でも私にはそんな事関係ない

「お父さん!」
私とお母さんの声が重なった

あまりの出来事に立ち上がってしまった
私に近づくお父さん

「悪い……遅くなった」

その言葉が
私は嬉しくて嬉しくて…