ぺきり。

無意識なんだろう。彼はどこか遠くを見つめたまま、飲み干したスポーツドリンクのアルミ缶を片手で潰した。

タオルで乱暴に、額に浮かんだ汗を拭う。

潰れた青い缶を見て、あたしは思う。

彼はあんなに強くあたしを抱きしめたことはない。



「お前、潰れちゃいそうだなあ」

そう言って、逞しくて少しだけ日に焼けている腕にあたしを抱いて、暖かくて武骨な指で優しく優しくあたしに触れる。


もっと強く、ぎゅってして欲しいな。


あたしは青い缶を見て、そんなことを思う。


そんな簡単には潰れないよ。だから、だからあたしもぎゅってして。


そっと、彼の太ももに手をのせて擦り寄る。

「ん、どうした?」

彼は片手であたしの頭を撫でた。

ぺきり。

彼はもう一度、缶を握った。

ガコンっ!

そしてその缶を少し離れたごみ箱に捨てた。


やっぱり。

強く抱きしめてくれなくていい。

だからあたしを捨てないで。


あたしを抱き上げた彼の腕の中で、あたしは小さく鳴いた。





青いカンカン。