それは、ひどく静かな夜だった。


並んで歩いているはずなのに、彼女の足音は僕のそれよりも早いリズムを奏でる。

冷たいアスファルトに、湿ったような夏の匂いが通り過ぎる。

車のヘッドライトが僕らを照らした。

僕の服の裾を掴んだ君の手に少し力が入った。


車が過ぎれば、そこはまた静かな夜。


掴まれた手を握れば、僕はまた一つ小さな決意をする。



この手を二度と、離さないようにと。





硝子玉の夜。