あのパーティーから、もうふた月が経過しようとしていた。

 もともとかかわりの薄い獣人の、しかもその王と話す機会などあるはずもなく、ゲルハルトには謝罪できないままでいる。

 それ以上にナディアを悩ませているのは、現実が自分の知るものと異なり始めていることだった。

「お嬢様は最近溜息ばかり吐いていらっしゃいますね。なにかお悩みですか?」

「まあ、そうね。いろいろうまくいかなくて困っているの」

「もしかして殿下とのご関係で……?」

 最近のナディアはジャンからわかりやすく放っておかれている。

 おそらくは彼女がコリンヌとの密会に出くわしたせいだ。