厩での生活は十日で終わった。

 朝早くに叩き起こされたナディアは、表向きの理由である留学生にふさわしく身を清められた。

 渡されたワンピースは貴族だった時と違い、動きやすい平民のものだ。

 裾や襟、袖のどこにもレースがなく簡素で、そもそも身体を覆う布にあまり余裕がない。

 一応、肌を見せない程度に足を覆う分はあるが、生地自体が薄くなにも身につけていない気にさせられた。

 地味な灰色はナディアの華やかな髪色に合っておらず、適当に用意されたものだとすぐにわかる。

 髪も雑にリボンでまとめただけで、彼女が実家の屋敷にいた時のように丁寧にくしけずってくれる者はいなかった。