翌朝、私は何となく目が覚めた。

「おはようございます、うたさん。」

障子の向こうに、志麻さんが座っていた。

「入りますね。」

「はい……」

寝ぼけたまま起き上がり、布団を畳もうとした。

「あっ、うたさん。布団はそのままで。」

「へぇ?」

自分が寝た布団を畳まないなんて、あるの?

「お嬢様は、自分で布団を畳もうとはしません。後で私が畳みますから、先にお顔を洗って下さい。」

見ると、黒い上質の桶に、水が入れてあった。

「これで、顔を洗うの?」

「はい。」


これもお嬢様になる為だ。

私は、桶の水で顔を洗った。

その間に布団は、志麻さんがパパッと畳んで、押し入れに入れてしまった。

「今日のお召し物は、これです。」

差し出されたのは、昨日とは違う着物。