個室に移ると
“華、お疲れ様。よく頑張ったな。
ふたりとも無事で本当に良かった”
とすでに個室で待っていた幸太に笑顔で
迎えられた。これだけでも出産を
乗り越えた甲斐があると思ってる私は
本当にチョロい。

幸太は赤ちゃんが産まれてから
毎日面会に来てくれていたが名前がまだ
決まっていなかった。性別が分かって
からずっと、名付けの本や字画を
沢山調べていたが、見過ぎてしまい、
何が良いのか分からなくなっていた。

「名前なんだけど…」

「万里(ばんり)はどうかな?
 “万里一空”から取ったんだけど。  
 目標や目的を見失わずに励む、頑張り
 続けるって華そのものだなって思って
 て。華が諦めずに頑張ってくれたお陰で
 俺も華と結婚出来たし、この子が
 産まれてきてくれた」

「すっごい良い名前!だけど、
 私が主体の名前でいいの?」

「華さえ良ければ。俺は“万里”を呼ぶ度に
 大好きな華も思い浮かべられる。
 一石二鳥。それに華は今、幸せ?」

「もちろん。長年の想いが叶って幸太が
 傍に居てくれてる。大好きな幸太との
 子どもも産まれた。幸せ以外にない」

「だったら、この子も華はみたいに
 やるべきことを見失わずに頑張れば幸せ
 になれる。頑張り過ぎちゃうのも困るん
 だけどね。でもその時は俺達が手を差し
 伸べればいい。それに俺も一応は子ども
 の頃からの夢を叶えたし“万里一空”は
 当てはまるかなって」

「海外に携わる仕事ね。私も“万里”の名前
 を呼ぶ度に大好きな幸太を思い浮かべら
 れる。一石二鳥どころじゃないね。
 幸太は今、幸せ?」

「幸せ過ぎる。華と過ごす度に幸せが更新
 されていく。この先、華の居ない人生は
 考えられない」

「じゃあ、幸太みたいに夢を諦めない姿勢
 を持ち続けたら万里は更に幸せになれる
 ね。素敵な名前を考えてくれて
 ありがとう」

「うん。これからも3人でもっともっと
 幸せになろう」