七海は俺が居ないと何も出来ない
タイプの子だった。何か言ってくる度に
“少しは自分でも何とかしようとしろ” 
“自分で考えてみろ”と言ってはいたが、
“何で?どうして?”と。最後はその
遣り取りも面倒になって結局はこれは
自分の役割なのだと思い、諦める様な
感じになっていた。それさえなければと
思いつつ、嫌いな訳ではないし、
別れる理由もないからと交際は月日を
重ねて6年。突然の七海の実家の騒動。
七海から話を聞き、助けたいと思った。
当時の俺は希望していた部署に
入る事も出来、仕事も遣り甲斐を感じで
いて、何もかもが上手く行っている、
今だったらどんなことでも
乗り越えられるくらいには
高を括っていた。
だからこそ“七海の家は俺が守る”なんて
カッコイイことが言えたのだ。
だが実際は違っていて、
何をしていいのか分からない上に、
自分の仕事に手一杯で結局時間だけが
過ぎていった。そのうちに七海の実家に
支援したいという人が現れ、その条件に
向こうが七海との結婚を望んでる
という話が持ちが上がる。七海から
再三の連絡に“どうするの?” 
“どうしたらいいの?”と 
俺にどうにかしてもらおうという 
自分本位の考えや
全く俺の事情など気にしない発言に
次第に苛立ちが募っていった。
八方塞がりの状況での華の提案。
正直、華の提案は馬鹿げてると思っが、
“幸太の事、幸せに出来るよう努力する。
後悔はさせない。だから私の手を取って
欲しい”そう真っ直ぐに俺の目を見て言う
華に、その言葉に胸に来るものがあった。目が離せなかった。

七海が結婚するか、俺が結婚するか…
この状況で選択は一つしかなかった。
いくら今回の事で苛立っていたからと
言っても七海の事を嫌いになった
わけではないし、長年付き合っていた
相手だ。望まない結婚なんてさせたくない。俺は華の提案を受け入れる事を決め、七海には“他の人と結婚をするから別れて
欲しい”と告げた。七海は
訳が分からないと泣きじゃくってたが、
俺はこれで良かったんだと自分自身に
言い聞かせ、“恨んでもらって構わない”と振り切った。俺に対しての未練など残して 
欲しくなかった。これからの未来、
前を向いてしっかり歩いて欲しかった。