結婚から1年半が過ぎた頃、
体調の異変に気付いた。初めは
たまに起こる下腹部痛だった。
痛みが持続する訳ではなかったし、
おりものに血が混ざっていた為、
生理がくるのだと思っていた。
しかしいくら待っても生理が来ず、
まさかと思い妊娠検査薬を使ってみた。
説明書の時間を待たずしてすぐに
赤のラインが現れた時には手が震えた。
幸太の赤ちゃんがお腹にいる? 
痛みも出血もあったけど!?
検査薬だけでは心配で、すぐに
産婦人科に受診した。エコーで
腹部が映された時、小さい丸が
ピクピク動いて先生から   
“心拍が確認出来ました。最終月経日
と大きさをみると8周目位かな”
と言われた。妊娠に気付く前に
下腹部痛とおりものに血が
混ざっていた事があり不安だと伝えると、妊娠初期にはよくあること、
内診したけれど今のところ問題はない
様だから無理はしないで様子をみて
大丈夫でしょうと言って下さり
一先ず安心した。こんなに小さいのに
もう動いていて、心臓の音を聞いた時は 言葉にならないほど感激した。 
自分のお腹の中に最愛の人の子どもが
いる。幸太は変わらず私に優しく  
接してくれている。幸太の人生を
犠牲にしてまでして手に入れた
結婚なのに、自分だけこんなに
幸せでいいのだろうか。幸太は一緒に
喜んでくれるだろうか。

次回までに母子手帳を貰ってきて
下さいと言われ、その足で役所まで
取りに行った。母子手帳を
受け取った時には、母親になるのだと
実感したが、同時に父親の名前を
書く欄があり幸太の名前を書いて
いいものか不安が過ぎった。
そもそもこのことをいつ伝えようか。
幸太はどんな反応をするだろうか。

病院に行ってからは、下腹部痛も
出血もなく、つわりがあると
言われている時期でも吐く事はなかった。幸い私は軽い方で、空腹になると
気持ちが悪くなる程度だったから
常にチョコレートを持ち歩く様になった。幸太にはまだ言えていない。妊娠を
聞いたら喜んでくれるかもしれないが、
また“結婚してください”と
言われたときの様に諦めたような顔を
されたらと思うとなかなか
言い出せずにいた。
幸せを知ってしまった今、
私は臆病になっていた。