シャーリィの胸がずきりと痛んだ。

 昨夜のことを『嫌なこと』だなどと、シャーリィは一度も思ったことはない。
 だが……それでもシャーリィは、息を吸い込み、毅然(きぜん)とした顔で告げた。

「……そうよ。嫌な目に()ってしまったの。最低な男に会ってしまったわ。もう二度と、あんな男には会いたくないわ」

 ウィレスが傷ついた表情になるのが、シャーリィには分かった。胸が痛む。だが……
(これでいいのよ。万に一つでも、希望があるなんて思わせてはいけない。(あきら)めてもらわなきゃいけないのよ、私のことは。だって、兄妹で結ばれるなんて、許されないことだもの)

 ウィレスは傷ついた顔のまま、口元だけで笑みを形作る。
「大丈夫。そんな男は、もう二度と現れない。現れたとしても、私がお前に近づけさせないから」

 いつもの優しい手で、ぽんぽんと頭を(たた)かれ、シャーリィは無性(むしょう)に泣きたい気持ちに(おそ)われた。

(……ずっと、気づかなかったのよ。お兄様の気持ちに。今まで私、どれくらいお兄様を傷つけてきたのかしら。何も知らずに、わざと甘えて困らせて……一体、どれだけお兄様を苦しめていたの……?)