夜の倉庫街は静まり返っていた。そこにバイク音が響く。

 この辺は、俺たち不知火の溜まり場のある倉庫街とは別の区画だ。不知火の方はこじんまりとしていて稼働している倉庫が多い。

 しかし今来たこちらの方は、休眠中でほとんど動きのない倉庫ばかりだ。外灯も節電の為なのか、半分くらいしか点いていなくて薄暗い。

 その一番奥に、場違いな黒塗りの車が二台、傍に数台のバイクも停まっている。


 そこに藍乃がいる事は明確だった。


 倉庫を取り囲むように指示を出しバイクを停めた。エンジン音に気が付いたのだろう、中から二人の若い男が出てきた。年齢は俺と同じくらいか、少し下か。どちらにしろ最初に出てくるなんて、使いパシリだろう。

 少し警戒しながらバイクから降りた。

 着ていた特攻服の裾が風を受けて翻る(ひるがえる)。他の奴らもみんな、同じ真っ白な特攻服姿だ。

 それが風を受けて一斉にゆらめく。ゆらりと浮かび上がる真っ白な特攻服。まるでそれは、夜の闇に輝く光の群れのよう。

 特攻服を着た不知火には、もう一つの名前がある。それは――




 白輝の王者(びゃっきのおうじゃ)




 誰が呼び始めたのかは知らないが、純白の特攻服に身を包んだ不知火はそう呼ばれている。