水出さんへの報告



甘い物が嫌いでないのは、たまに他部署から差し入れられるお菓子で知っていた。

水出さんは、もらったお菓子の感想を後日差し入れてくれた相手に返していたし、頬をほころばせていた様子からきっと好きだろう。

だから、と手に取ったのはチョコレート。

先日、桃ちゃんの家でご馳走になったとき、見た目も可愛く味もよかったので、水出さんへのお礼に丁度いいと思い、お店を教えてもらった。

会社の最寄り駅から四駅先の駅地下にある専門店には、思わず目を奪われるようなチョコレートが並んでいて、悩んだ末、六枚がセットになっているものにした。

三センチの正方形をした厚さ五ミリほどのチョコレートには、それぞれピンク色や白といったカラフルなチョコレートで模様が描かれており、ドライフルーツやナッツが散りばめられている。

見た目がいいからか、客層は学生や私くらいの年齢の女性がほとんどだった。

そんなチョコが入ったショップバックを更衣室に置いてある長テーブルの上に置き、着替えを済ませてからパイプ椅子に座る。

壁掛けの時計が指すのは十八時十分。
私が上がってから五分が経とうとしていた。

最後に挨拶をして回った際、水出さんのデスクもおおよそ片付いていたし、もうそろそろ来るだろうと思いながら待つこと二分。

二回のノックのあと入ってきた水出さんを確認するなり、ショップバッグを持ち立ち上がる。

私が勢いよく動いたからか、水出さんはドアを開けたままの体勢で目を見開いていた。