実際やってみたら本当に割が良くて、

言われるがまま動いたり表情作るだけでめちゃくちゃ褒められて金が入る。

俺はぼーっとしてるだけなんだけど、この業界的には俺みたいな緊張感のないやつの方が重宝されるらしい。






「はい、SNS用の写真撮るわよー」


いつものように白井さんが自前の一眼レフを構えて、俺は目線を送る。


「はーい笑ってー」


「にこにこ」


効果音を口で言ってみても俺の表情筋は微動だにしない。



パシャッ。

白井さんがシャッターを切る。



「…あんたほんと笑えないわねぇ。今日の撮影で初めて見たわよ、あんな顔。」


白井さんにやんわりディスられながら無表情でカメラのレンズを見ていた俺は、ふと白井さんへの事務連絡を思い出す。




「あ、俺来月で辞めます」




「はーいりょうかーい」




パシャッ。

白井さんがシャッターを切る。




「…ん?」




そしてかたまる。




「…え?辞める?辞めるって言った?」


「うん」


「え、待って待って…それって事務所を退所するってこと…!?」


「うん」


徐々に意味を理解し始めた白井さんの顔から、どんどん血の気が引いていくのがわかる。


「は?…はぁ!?なんで!?」


「就活だから。」


「いーやいやいやいや」


白井さんが顔面蒼白で俺の肩を持って首を横に振る。