ふと、唯くんのリクルートバッグと共に置かれた手提げ袋が目についた。




「…あ、合同説明会?」


またお酒を一気飲みしようとしていた唯くんが途中でグラスを下ろして「うん」と言った。


「そっかー!唯くんはやっぱり自動車関係?」


「うん…メーカー狙ってる。まだ他の業界も視野に入れてるけど」


「うんうん、今年も採用厳しそうだもんねぇ…でも唯くんは賢いしかっこいいからきっと引く手数多だねぇ!」


わたしがヘラヘラと唯くんを見ると、唯くんが首をグリンと反対方向に向けた。






「…」






あれ…?

応答がない。

なんか失礼なこと言っちゃったかな…?






「唯くん…?」


「…うん」





あ、戻ってきた。

わたしはいつも通りの無表情に安心してヘラヘラする。





唯くんがそんな私を見て少し停止した。



「?」



私が首を傾げると、唯くんがグラスを掴んで残っていたお酒を一気に飲み干し、手をあげた。



「すいません。芋、ロックで。」





…唯くん、飛ばしてるなぁ。