「ちょっと七瀬、炒め物のピーマン残したらぶっ飛ばすから」

「いや塔子ちゃん、ずいぶん物騒じゃない?おれがピーマン苦手なの分かってて極端すぎない?」

「おいしくなあれぇ!って魔法かけたからいけるわよ」

「………。」

「いや無視!あたしにツッコむどころか!無視!!!」

「あははっ!」



その日の夜。

お母さんとなっちゃんの弾むような会話を聞きながら、可笑しくて声を出して笑ってしまう。


食卓に並んだ揚げたてのエビフライを噛むと、サクッと軽快な音を立てる。視覚と味覚に加え、確かな音がなおさら楽しい高揚感を連れて来てくれたのだった。



「それにしてもお父さん来ないわね…」

「わたし呼んでこようか?」

「いーよいーよ、その分おれがエビフライ食べるから」

「あんたは食い意地張ってるだけでしょうが!」



家族で囲む食卓に、空席がひとつ。お父さんの席だ。

実はもうとっくに帰って来ていて、二階の整理をしてくれている。


さっきお母さんが呼んだ時は、すぐ行くって言ってたんだけど…。