あれから六年が経った。

 あの日、私は卒業式が終わってからすぐにあの公園に行った。今までの人生で一番全力で走ったと思う。心のどこかで自分は匠真にとって特別なんだと自惚れがあったのかもしれない。卒業式にはいなくても、私との約束は絶対に守ってくれると、そう信じていたから。だけどどんなに必死に走ったって、一秒でも早く公園に着いていたって、きっと匠真はいなかったこと、今なら考えなくても分かるのに、あの時の私はまだ幼くて、幼すぎて、現実を受け入れられなかった。だから誰もいない公園を見て、卒業式で出なかった分の涙まで溢れ出た。

 匠真は、現在(いま)どこにいるのだろう。誰と過ごしているのだろう。あれから私はどうにか匠真の居場所を知れないかと、先生に引っ越し先を尋ねたり、匠真が受験した高校に問い合わせたことだってあった。それでも、見つけられなかった。だから私は自分にこう言い聞かせた。やれることは全部やった。まだ幼い自分にできる範囲ではあるけれど、やり切ったんだと。だから、私が匠真と繋がることはきっともうないのだろうと。

 匠真に最後に会った日にもらったあの小さな袋は、今もまだ開けずに一人暮らしをする部屋の机にしまってある。何度も開封しようとしたけれど、中身を見てしまうと思い出が全部消えてしまう気がして、どうしてもできなかった。
 ねぇ、匠真。こんなこと言ったらしっかりしろって怒るかもしれないけど、聞いて。もうすぐ二十一歳になるのに、私は今でも十五歳のまま止まってるんだ。君は前に、進めていますか?