どれだけ時間が過ぎたかわからない

待合室で座るも何も考える事はなくただただ静かに待っていた。

時計の音、何かの機械の音、人の話し声、足音、様々な音が静かに俺の耳に入った。

長かったのか短かかったのかすらわからないけど気がついたらバタバタと看護婦さん達やお医者さんも動き出した。

(終わったかな?母さん入院になるんかな?着替えとか入院準備とかどうしよ、つか明日からしばらく一人でって事になったらご飯風呂洗濯とかどうしたら良いんだろ?)

ずっとそんな事を考えていた。

一人で話しを聞いてもわからないだろうから井上先生に寄り添ってもらい、医者の話しを一緒に聞いてもらった。

一言で言うと母さんは亡くなった。

医者から運ばれた時の母の容態だとか懸命におこなった処置の話しを聞くが全く耳に入って来なかった。

霊安室とかこれからの話しとかされるが俺には全くわからなかった。

「わからん。わからん。先生、俺無理や」

明日からどうしたら良いのかわからない不安と絶望から出た言葉だった。

そんなカタカタ震える俺に井上先生は

「大丈夫や」

強く抱き寄せてくれた。

そして井上先生は卒業まで俺の事を親身に世話をしてくれる事になる。

これから一生、井上先生には足を向けて寝れんと思った。

とりあえず、一旦家に帰って翌日は通夜、翌々日は葬儀と言う流れになった。

「一人で大丈夫か?」

「た、多分」

「何かあれば何時でも良いから連絡してこい。とりあえず明日朝家に来るから学校にはその時俺から連絡するから」

先生は神妙な面持ちで帰っていった。

布団に包まり横になるも恐怖から一睡も出来ず、ただひたすら早く朝になってくれと願い朝を迎えた。