ちっちゃい頃から僕、松本拓郎は鈍臭くよくこけたりぶつかったりしては怪我を繰り返し親を心配させていた。

そして今回も打ちどころが悪く頭に包帯を巻いてしまった。

診察室を出ると凄いダッシュをした少年が僕の目の前を通過した

「わわわ!」

ぶつかってはないけどビックリした僕はドンっと尻もちをついてしまった。

「あ、わりぃ!」

男の子は片手でごめんって手を合掌するポーズだけしてそのまま再び走り去っていった。

すると曲がり角から鬼の形相をした女性が出てきた。

「あの馬鹿何処いった!?」

血相を変えて探す女性がさっきの少年の母親である事はすぐにわかった。

「あっちに…」

思わず萎縮してしまう程の顔つきに僕は思わず走り去った彼の行き先を指差してしまった。

「あら、ごめんねあなたもウチの子に何かされた?」

頭の包帯見ながら申し訳なさそうに尋ねるおばさんに僕は首を横に振った。

「ウチの子は喧嘩ばかりで今回も喧嘩して相手の子に怪我を負わせてしまったから謝りに来たんだけど、ウチの馬鹿息子ったら相手の人を前に謝りもせずに走って逃げたのよ」

おばちゃんは困った顔をしながら足速に僕にぺこりと頭を下げていった。

きっと頭を下げたのは行き先を教えたお礼で下げたわけじゃなくて癖になってるんだろうなと幼きながらに思った。