私、主婦、松本亜依子37歳が好きな物はあまり多くの人に共感されない。

そしてよく変わり者と言われる。

好きな戦国武将は毛利元就

好きなお札の人は野口英世

好きな天気は雨

好きなデザートは干し柿

好きな技は貫手

好きな言葉は、慌てる時間じゃない

好きなプロレスラーはアントニオ猪木

好きなお笑い芸人はニューオールド

そしてこんな私を小学生時代から好きで純愛を貫いた旦那さんはもっと変わり者だと思う。

凄い辛い半生を送ったはずなのに

「生まれ変わってもまた僕になりたい」

と、言う。

あれからの人生は特に人に話すようなスリリングでエキサイティングでドラマチックな出来事はなく、ただただ平穏で普通の生活を送っている。

時刻は夜9時、夏祭りに行ってた息子は目を輝かせながら帰って来た。

「ママー!見て見てー!」

そう言って長男の蒼(そう)5才はカブトムシを手に持って近づいてきた。

「少し背の高いーあなたの耳に寄せたおでこおおおおおおお!」

私はそう言って息子と一定の距離を保った。キープディスタンス。

「ママは虫苦手って知らなかったっけ?知らなかったっけ?それともあれか?苦手と知っときながら有名アーティストと同じ名前だからカブトムシでイジってんのか?」

ニヤリと微笑み怖がる私を見てはジリジリと距離をつめてくる。

一歩近づくと一歩逃げる。

嫌がる私に見せる無邪気な笑顔が狂気に感じる。

「こらこら、嫌がってるママにそんな事しないの」

旦那は困った顔をしながら息子を止めた。

「そうそう!ママも女の子なんだから女の子に優しくしないとダメなんだよ!」

長女の凛(りん)7才が弟を叱った。

はーいと返事をした息子は旦那と一緒にカブトムシの飼育セットを準備し始めた。

「凛!ありがとうー!」

私を守ってくれた凛にお礼を言った。

やんちゃな長男に落ち着いた長女。