明菜の姿を見つけた後、私は上島君の姿を探した。

すると遠くの物陰から明菜の弟の真彦君の姿が見えた。

(あんた今日学校は?)

(休みました)

アイコンタクトを送ると返事来た。

めっちゃ心配そうな顔でこっちを見てた。

心配でお姉ちゃんの告白の行方を見守りに来たようだった。

「うわーん、うわーん、マジみんなありがどゔー」

ビービー大声で泣きながら校門に出てくる上島君の姿が見えた。

まだ泣いとるんかい。お前は乳離れ初日の子供か。

つか、やばい来たよ!

この時が来た!

舞台は卒業式!

一世一代の告白の大舞台!

立ち会う私までめっちゃ緊張してきた!

(頼む!)

頼むと願うも明菜の事を思うと成功して欲しいけど、明菜を上島君に取られると思うと失敗して欲しいなんとも複雑な心境だった。

真彦君も影に隠れて両手でお祈りしてた。

そんな上島君が校門から一歩外に出たのを明菜が気付き勇気を出してゆっくり歩き出した瞬間。

(あれ?誰?)

1人の女性が上島君に話しかけた。

「お姉ちゃん!」

その女性に上島君はそう呼んだ。

「ねえ、お姉ちゃんって上島君に居たっけ?」

拓郎の顔を見て話しかけるが拓郎は別の方を向いてて私の話しを聞いてないし相変わらずイケメン過ぎて惚れ直した。

その女性の姿を見て明菜が一旦歩みを止めた。

気のせいか女性と剛君が会話を始めた途端、真彦君は人生の終わりみたいな顔をしてるように見えた。

まあ、お姉ちゃんならすぐに話しが終わるなと思ったら2人は抱き合った。

「彼女にしてください」

「え?」

「めっちゃ幸せ」

そう言って2人はキスをした。

「ええええええええええ!?」

驚く私。

湧き上がる観衆。

明菜をふと見るが死んだような顔をしてた。

魂も抜けかけている。

心なしか手に持ってる花束も枯れてきてる気がする。

明菜の告白が万が一ダメだった時に備えてタクシーをチャーターしてた弟の真彦君がサッと明菜を連れて乗せて帰った。

「あれは一生残るトラウマになったわ」

お互い大人になり居酒屋で明菜はイカゲソを食いながら当時の事を話してくれた。

「すいません、焼酎ロックで!」

「はいよ!」

次々ハイペースで進む酒に明菜の隣に座る旦那さんは苦笑いしてた。