ピピピ……と室内に響き渡った電子音によって、私の意識は呼び起こされる。私は目覚まし時計のアラームを止めると上半身を起こし上げ、両手を組むと、ぐっと天に向かって伸ばした。気持ち良い……!

「おはよう、お母さん」

 良い一日になると良いな。そう思いながら私は写真の中のお母さんにあいさつをした。

 さてと、早く支度をしないと。学校に遅刻しちゃう。

 私は素早く制服に着替えると、洗面所で顔を洗って髪をとかす。よし、寝癖もない、身支度が整った。あとは朝ご飯を食べるだけ。

 その足でリビングに向かうけど、扉を開けようとしたその手前、
「ぼーたーんっ!」

「きゃあっ!?」

 び、びっくりしたあ……。振り向くと梅吉兄さんが私にまとわりついていた。

 兄さんってば、いきなり抱き着いてくるなんて心臓に悪い。

「梅吉兄さん、朝からなんですか」

「なんだよ。かわいい妹に抱き着いたらだめなのかよ」

「だめっていうか……」

「だって、女の子達の代わりに牡丹が慰めてくれるんだろう?」

 私は思わず返事に詰まる。確かに女の子と遊ぶのはやめるように言ったけど、でも、そこまでは言ってない。梅吉兄さんってば、本当に調子良いんだから。

「ていうか兄さん、部活の朝練はいいんですか?」

「今日は休みだもーん。だから牡丹、一緒に学校行こう」

 まあ、学校に行くくらいなら……。

 そう思って返事をしようとしたけど、その前に、べしん! と鈍い音が鳴った。梅吉兄さんの口から「いてっ!」と短い悲鳴がもれる。

 振り向くと、丸めた雑誌を持った道松兄さんが立っていた。