朝独特の穏やかな陽射しに包まれながら、私は身支度を整えるとリビングに入る。

 すると、
「おはよう、牡丹。牡丹にも、はい、カタログ」
 部屋に入るなり藤助兄さんに分厚い冊子を渡された。

「なんですか、これ。ええと、『幸せ家族策略』……?」

 私は冊子の表紙をじろじろと眺める。

「あれ、知らない? 土曜日のゴールデンタイムに放送されてる、視聴者参加型のバラエティ番組だよ。芒が応募したら、その挑戦権に当選したんだ」

「へえ、すごいですね。当選するなんて」

「芒は人一倍運がいいからね。でも、応募してたなんて知らなかったよ」

「あのね、みんなを驚かせようと思ったの」

 芒は得意そうに、にこにこ笑いながら言った。

「それで、具体的にはどういう番組なんですか?」

 私が訊ねると、藤助兄さんが丁寧に説明してくれる。

 なんでも家族みんなで番組が用意したゲームに挑戦して、全部クリアできれば賞品がもらえるみたい。ちなみに私達が出演する回は生放送スペシャルなんだって。

「さっき渡した冊子が、もらえる賞品が載ってるカタログだよ。欲しい物を選んでね」

「へえ、ゲームソフトに洋服、それに家具や電化製品まで。なんでもそろってますね」

「賞品総額は一家族につき百万円だって。一人分に換算したら大体十万円だね」

「十万円分ですか!?」

 十万円――。

 私のような庶民派高校生にとって、十万円は、とっても魅力的な響きだ。

 だけど……。

「でも、そのためにはテレビに出ないといけないんですよね?」