暖炉に小さな炎が揺れる自室で、モニカは柱時計を気にしてソワソワしていた。

時刻は十五時十分。

居間のソファから立ち上がろうとして「まだ少し早いわね」と座り直す。

ナターシャは向かいのソファでレース編みをしている。

じっと座っての作業に興味のないモニカと違い、ナターシャは編み物や刺繍を好む。

半分編み上がった見事なレースは、クッションカバーに仕立ててモニカに使ってもらうと言っていた。

かぎ針を操る手を止めたナターシャが、落ち着きのないモニカに目を瞬かせる。

「そんなに楽しみなんですか? 陛下とのお茶が」

これまでもシュナイザーのティータイムに二度だけ呼ばれたことがあったが、その時は渋々といった心境だった。

けれども彼の素性を知った今は嬉しくて、早く約束の十五時半にならないかという気持ちでいる。