「一度医師の診察を受けなさい」
咲の父、政信の言葉に咲は視線を向ける。

この日のために準備してきた。
玲と会っても動揺を見せない。ちゃんと自分にはできるのだと安心してもらえるようにしようとしてきた。

「受けています。大丈夫です。」
「そうは見えない。」
父の言葉には心配する気持ちなど含まれていないことは咲にはわかっている。
宮ノ内グループを背負っていく立場として、見た目の重要であることは再三言われてきた。
たとえ家の中でも、きちんとした格好をすることも、父に対しても常に敬語を使うことも。
外へ出ても恥じないようにしつけられてきたことだ。

「これは命令だ。もし、受診せずにまた体調を崩し業務に支障をきたす事態を起こした時は、お前を社長から降ろす。そしてそばに勤務する真岸や家政婦たちも解雇だ。」
「そうならないように努力します。」
咲は父の厳しい判断に少し動揺する。