「でもね・・・」
「うん」
咲は玲の目をまっすぐに見つめる。

「逃げたくない。」
その瞳の中には咲の強さがある。

「お父さんはもう頑張らなくて良いって言ってくれた。本当は私が一番欲しかった言葉だった。でもね、すべてを投げ出そうって思ったんだけど・・・。」
「うん」
「逃げたくない。」
「うん」
まっすぐ、しっかりと玲を見つめる咲。
涙を流しながらも、その視線にもう迷いはない。

「私、逃げたくない。」
「わかった。」
玲はもう十分だと、咲を抱き寄せた。