仮の彼氏彼女になってから、悠くんは毎日私の登下校について行ってくれるようになった。

律儀な悠くんはわざわざ私の家まで迎えに来てくれる。

悠くんが近くにいると、強い安心感を覚える。

だけど、距離が近くなった分、私の心臓は常に暴れるようになってしまった。



放課後になり、長く続いた授業から解放された。


《正門の近くで待ってるから》


ホームルームが終わったタイミングで悠くんからラインのメッセージが届いていた。

待たせる訳にはいかないと立ち上がり、教室を早足で出ていった。

生徒玄関に辿り着き上履きを脱いだ時、近くにいた他のクラスの女子二人の会話が耳に入った。


「今日も例の大学生来てるかなー?」
「あの人、何回みても目の保養だよねっ」
「こっそりスマホで撮っちゃう?」
「あんたそれ盗撮になるよ」


悠くんは、うちの高校の生徒の間でちょっとした時の人になっていた。

誰が見ても満場一致で美形な悠くんは、どこにいても注目を集めてしまう。



正門を出ると、少し離れた所で悠くんが佇んでいた。

推定一八○と数センチありそうな悠くんは、立っているだけでモデルのように絵になる。

仮でも私が彼女でいいものか不安になってしまうよ。


「ごめん、待った?」


悠くんの元へ駆け付けると、悠くんは嫌な顔一つ見せず微笑を浮かべた。

周囲にいた女子達の黄色い悲鳴が上がりだした。

沢山の女の子を魅了する悠くんは、本当に末恐ろしい人です……。