悠くんが、目を覚ました……。

病院へ向かっている間、私は夢か現実か分からず、何度も頬をつねっていた。

何度つねっても走る痛みが、現実で起きたことだと教えてくれた。

早退届を出さずに学校を抜け出してしまった。

面と向かいあっても、軽蔑の眼差しを向けられるオチしかないのに、体が勝手に動いていた。

悠くんが目を覚まして、此処に生きているんだと実感したいから。

空席が多いにもかかわらず、いても立ってもいられない私は、電車の中で立ったままそわそわしていた。





今病院に着いて悠くんがいる病室の前にいるけど、私は取っ手を握ることすらためらっていた。

会いたいのに、いざすぐ近くにいると思うと怖気付いて動けない。


「響は、無事ですか?」


ドアの向こうから、悠くんの声が耳に届いた。

どうして、私の安否を気にしているの?

悠くんの考えていることが分からない。


「おい、戻ってこい……心配しなくても響ちゃんは何も巻き込まれていないよ。お前を刺した月見里は逮捕された。殺人未遂罪に切り替わったらしい」

「よかった……響に何かあったら、生きていけない」


聞こえた声に、耳を疑った。

私の代わりなんていくらでもいるのに、どうしてそう言ってくれるの?

私は、酷い噂がまとわりついて、孤立して、周りが悪逆非道な人間だと思っているような最低な人間だよ。

正直、嬉しさより信じれないという気持ちの方が強かった。




「……今の聞こえた? 響ちゃん」

「……!」


ドアの向こうから聞こえた川端さんの声に、戸惑って立ち尽くしている私は驚きで肩が大きく揺れた。

川端さん、どうして分かったの?