そして時は流れ、六月。

 青々と伸びた草木に雨がしとしとと打ちつける。

 店内を彩るのは、アジサイや傘、カエルをモチーフにした飾りつけ。

 兎月堂にも梅雨の季節がやってきた。


「……はあ」

 秋葉が教室の中でため息をつく。

「どうしたんだよ、秋葉ぁ、元気ねーじゃん」
「らしくねーぞ」

 仲の良い男子が秋葉の肩を組んでくる。

 だけど秋葉は浮かない顔で目をチラリと向け「ああ」と言うだけだった。

 女の子たちがヒソヒソとウワサをする。

「どうしたのかしら、秋葉くん」
「もしかして、例の彼女と上手くいってないのかしら」
「えーっ、だとしたらチャンスじゃない!?」

 全く、好き勝手言っちゃって。

 私がその様子を横目に見ていると
莉茉ちゃんが声をかけてくる。

「秋葉くん、元気ないみたいだね。どうしたの?」

「ああ、あれはね、多分新商品のことで悩んでるんだと思う」

 私が答えると、莉茉ちゃんは少し驚いたような顔をする。

「新商品って、和菓子の?」

「うん、そう」