「いいか? 絶対に偵察だってバレるなよ。俺たちは、付き合いたてのカップルが初デートに来たって設定だから! 初々しい感じを出せ!」

「はあ」

 秋葉の指導に、私は生返事をする。

 たかが和菓子屋を見に行くのに、そんな設定いるんだろうか。

 イケメンで派手な秋葉と地味な私じゃあ、全然カップルに見えないと思うけどなあ。

 それ以前に、私が幼すぎて兄妹に見えちゃうかも。

 うーん、ありえる。

 そんなことを考えながら、二人で歩いて新しく出来た和菓子屋へと向かう。

 和菓子処・風雅庵は、兎月堂から歩いて十分ほどのところにあった。

 うわあ、思っていたより近いなあ。

「わあ、オシャレなお店」

 私はお店をチラリと見た。

 古民家を改装したようなレトロな外観。

 広い駐車場は、オープンしたてだからなのか、たくさんの車で埋まっていた。

「さ、入ろうぜ」

「うん」

 私はドキドキしながら秋葉と藍色ののれんをくぐった。