兎月堂で働き始めて一週間。

 二度目の土曜日がやってきた。

 初めはビクビクしながら働いていたアルバイト。

 だけど、最近ではすっかり一通りの業務をこなせるようになっていた。

「ありがとうございましたー」

 私が小さな子供に手を振っていると、秋葉が奥からやってきた。

「おい、花帆、それそろ昼休憩行ってきていいぞ」

「はい。今行きます」

 顔を上げた私を、じっと秋葉が見つめている。

 ニヤニヤしていてやけに上機嫌そう。

「……何?」

 首をかしげると、秋葉は笑った。

「いや、いい笑顔だなと思ってさ」

 えっ。

 ほっぺたに手を当てる。

 やだ。
 ニヤニヤしているところ見られちゃったみたい。

 私がショックを受けていると、秋葉はニヤリと笑った。

「お前も、だいぶお店にも慣れてきたみたいじゃねーか」

「ほ、本当に?」

「ああ。学校では小さくて目立たねーし、小人か座敷わらしかって感じだけど、ここでのお前は結構いいぜ?」

 そう言って私の頭をポンポンと叩く秋葉。

「ざ、座敷わらし……」

 失礼な!

 確かに、背は小さいし目立たないけどさ。

 まあでも一応、仕事は褒められた……のかな?

 私は秋葉の整った横顔をじっと見つめた。

 初めは住む場所と仕事さえあればどこでもいいって思ってた。

 でも私は、すっかりここでの仕事を好きになっちゃったみたい。

 秋葉も思っていたより怖い人じゃなかったし……。

 ここでの暮らし、うまくやっていける……かな?