九時になると、私たちは二人で仕事場へと向かった。

 いよいよ、初バイトのスタートだあ。

 和菓子屋のフロアにつくと、さっそく秋葉くんの指導が始まった。

「じゃあ教えるけど、とりあえず朝来たらレジの準備と商品の確認な。それから掃除……」

 レジに小銭を詰めながら早口で教えてくれる秋葉。

「な、なるほど」

 私が必死でメモをしていると、秋葉がじろりと私をにらむ。

「ところでお前、和菓子屋で働いた経験は?」

「いえ」

「じゃあレジの打ち方は分かるか?」

「いえ……」

「はぁ、全くの素人かよ」

 秋葉があからさまにガッカリした顔を見せる。

「ご、ごめん」

「まあ、いいさ。初めから即戦力になるなんて期待してない。ゆっくり教える」

「は、はい……」

 そうこうしているうちに、開店時間になった。

 最初のお客様がお店に入ってくる。

 サラリーマン風の若い男の人。

「いらっしゃいませ」

 緊張しながら頭を下げると、お客様は和菓子のつめ合わせを指さした。

「これ一つください」

「はい、かしこまりました」

 秋葉は和菓子の箱を手に取ると、私に手渡した。

「ほら、レジ、やってみ」

 ……えっ、そんないきなり?

「ほら早く。俺が横についてるから」

「は、はい」

 ひえっ、めちゃくちゃ緊張するー!