「よし、そうと決まったら荷物を運び入れよう」

 店長さんの声で、ハッと気を取り直す。

 ウジウジ悩んでも仕方ない。

 もう前のアパートは引き払ったし、覚悟を決めてここに住まなきゃ。

 別に、同居って言ったって寝室は別なんだし。

 用がある時以外は自分の部屋に引きこもってればいいんだ。

 そうだ、そうしよう。

 自分で自分に言い聞かせると、私はチラリと卯月くんを見た。

 ……とはいえ、あの毒舌王子と同居なんて気が進まないけど。

「何見てんだよ」

 卯月くんがジロリと睨む。

「いえ、別に」

 こ、怖い。

 やっぱり、毒舌王子と一緒に住むだなんて無理だよ。



「ふー、疲れた」

 ダンボールをあらかた運び終える。

 時刻はもうすぐ十二時。

「さ、荷物も運び込んだし、引越し蕎麦でも食べようか」

 店長さんがお蕎麦を茹でてくれた。

「わあ、美味しいです」

 私と卯月くんと店長さん、三人で食卓を囲んでお蕎麦を食べる。

 なんだか落ち着かない。
 変な感じ。

「なあ」

 と、いきなり卯月くんに話を振られてビクリとする。

「な、何でしょうか!?」

「――敬語」

 卯月くんに指摘されてキョトンとする。

「敬語はやめろ。一緒に働くんだし、同級生なんだから」

「あ、はい」

「はいじゃない。うん」

「うん……」

 だから、怖いって!