「お疲れ様です。すみません、遅れて」

「あらまあ、イケメン!」

 牧野さんの顔がぱぁっと輝く。

「ああ、僕の弟の秋葉です」

 悠一さんが紹介すると、牧野さんは秋葉の顔をジロジロと見た。

「店長さんとはまた違ったタイプのイケメンでいいわね。兄弟というのも高ポイントよ。どう? あなたも写真に写らない?」

「いや、俺は……兄貴だけでどうぞ」

 だけど秋葉は、写真を断ってしまった。

 あ、そっか。

 雑誌に載ったりしたら、ファンの子たちに家とバイト先がバレちゃうもんね。

「そうですか。ではそのように致しますね。じゃあ店長さんには、そのお菓子を手に……そうですそうです」

 今度は悠一さんの撮影とインタビューが始まる。

 悠一さんは、このお店の店長になった経緯や、和菓子への情熱を一生懸命語った。

 牧野さんは、フムフムとペンを走らせた。

「それでは、載るのは来月号になるとおもいますので、雑誌が出来ましたら送りますね!」

 牧野さんたちは元気よく手を振り帰って行く。

 こうして、和菓子屋・兎月堂は雑誌デビューを果たしたのでした。

 お客さん、増えるといいな。