昨日は、家に帰ってから、伊緒くんはいつもの明るさを取り戻した。

私もそれになんとなく合わせて、なにもなかったみたいに振舞った。

それでも、一度感じたおかしな空気はなかったことには出来ない。

分かってたくせに見ないようにしてきた伊緒くんの本心を、予告もなくさらけ出されちゃんたんだから。

バカなふりをして、私がなにもわからない素振りが出来ればよかったのに。

いつもおバカなのに、どうしてこう肝心な時に本領が発揮できなかったんだろう。

……それはやっぱりおバカだからだ。


「はぁぁぁぁ……」

「どうしたのーぼんやりして」


自分の席でぼーっとしていたら、真柴くんがにょきっと横から顔を出してきた。


「うーん……」


今は相手にする余裕がなくて、生返事を返してしまう。