「カギ閉めた?」


先に玄関を出た伊緒くんが振り返って聞いてくる。


「うん、バッチリ!」

「ほんとかよ」

「ほんとだって。そんなに心配なら伊緒くんが確かめてくればいいでしょ?」

「めんどくせ」


もうっ!
伊緒くんは、言葉遣いが悪いのが玉にキズ。

乱暴っていうか、トゲというか毒というか。


そうなったのは小学校高学年のころから。

それまではすっごい優しくて、私のヒーロー……ううん、王子様みたいな人だった。

それがいきなりキャラ変しちゃったものだから、なにがあったのかとびっくりしたんだ。

男の子だし、かっこつけたい年頃なのかなあって思ってたんだけど、伊緒くんはずっとそのままで。

今となってはそれも含めて伊緒くんで、すっかり板についてしまった。