セシリアの驚愕の声に、アルヴィンはあっさり頷いた。
「そうだ。だが、この髪色からわかるかもしれないが、俺はこの国の出身ではない」
 たしかに彼の濡羽色の美しい黒髪は、この国ではとても珍しいもの。つまりアルヴィンは、他国の貴族の血を引いているということになる。
 そう考えると、納得することばかりだった。
 たしかにアルヴィンは、一般人には見えない。
 むしろ中身が一般人のセシリアは、気を許した人の前ではつい、動作や口調が崩れてしまう。
 アルヴィンの方が、佇まいや動作は優雅なのだ。 
 それに、彼に魔力があるのなら、守護騎士として一緒に学園に通うことができる。
「……アルヴィンはそれでいいの?」
 ずっと傍にいてくれるのは嬉しかった。
 自分を憎んでいる兄がいても、予知夢では破滅をもたらす王太子がいても、アルヴィンが傍にいてくれるなら大丈夫だと思うことができる。
 でも魔力を抑える腕輪をずっと身に付けていたことから考えると、彼は自分に魔力があることを隠そうとしていたのだろう。
 それなのに、セシリアの傍にいるためにそれを外してしまった。
「アルヴィンに危険はないの?」