アルヴィンと出会ってから、五年が経過していた。
 セシリアは十五歳になり、春になったら王立魔法学園に入学する予定だ。それから十八歳になるまでの三年間、貴族の義務として魔法を学ぶことになる。
 兄のユージンは十七歳。
 セシリアが入学する頃には、魔法学園の三年生になる。
 子供の頃はまだ、ふたりの間にある緊迫した空気を誤魔化すように、無邪気に兄に甘えていた。
 だがお互いに成長するにつれ、その関係は微妙なものになっていた。
 兄は、成長とともに強くなっていくセシリアの魔力を警戒している。
 その兄は、入学と同時に学園の寮に入っている。
 だから、長期休暇でしか会うことはない。でもこれからはセシリアも同じように、学園の規則によって寮に入ることになる。
 それによって顔を合わせる機会が増えるかと思うと、やはり憂鬱だった。
 何よりも、学園には魔力を持った者しか入学することができないので、アルヴィンと一緒にいることができないのだ。
 出逢ってから毎日のように一緒だったので、離れるなんて考えられなかった。
「どうした、セシリア」
 背後から掛けられた声に振り向くと、そこには守護騎士のアルヴィンの姿があった。
「アルヴィン」
 黒を基調とした騎士服を着た彼は、セシリアに名前を呼ばれた途端、ふわりと微笑んだ。
 セシリアは思わず頬を染めて、視線を反らす。
(うう、反則だ……。あの美少年が、こんなふうに進化するなんて……)