「うーん、何を作ろうかしら?」
 様々な食材が詰め込まれた冷蔵室で、セシリアは腕を組みながらそう呟いた。
 氷の魔法で部屋全体を冷やしているので、少し寒いくらいだ。
 公爵家の令嬢、しかもまだ十歳のセシリアが調理室に出入りし、しかも料理を作ろうとしている。
 ブランジーニ公爵家の使用人たちは戸惑い、大慌てで止めようとした。
 いつもなら誰も、セシリアのわがままを止めたりしない。だが、さすがに危ないことをさせるわけにはいかないと思ったのだろう。
 まだ幼いながらも美しく、魔力も高いセシリアだったが、父である公爵はそんなセシリアにまったく興味がなく、放任していた。