「たま」



放課後になって帰ろうとした時、声をかけられた。

岩尾くん……。



「帰るぞ」



私の前に立って、見下ろすようにそう言った。



「岩尾くん……いつも言ってるけど、もう、私のことはそっとしておいてほしい……」

「あ?」



不機嫌そうに眉間にしわを寄せた岩尾くんに、びくりと肩が跳ねた。



「ちっ……いちいちビビってんじゃねーよ」

「……」

「……いや、違う、そうじゃなくて……」



岩尾くんは困ったように、ガシガシと髪を掻いた。



「もうなりふり構ってられねーって言っただろ。いいから帰るぞ」



先を行くように、歩き出した岩尾くん。