ハヤセside




「それでは行って参ります」


「うんっ!ゆっくりしてきて!」


「どこかに出かける用事ができましたら、俺に連絡してくださいね。すぐに戻りますので」


「今日はお家でゴロゴロするから大丈夫!ハヤセもたまには息抜きしなきゃっ」



玄関の前、いつも共に行動するお嬢様が見送ってくれる朝。


執事といえどプライベートがまったくないわけではない。

こうしてお嬢様と時間を決めて、個人的な買い物をする機会だってある。



「エマお嬢様、火を使うときはくれぐれも気をつけてくださいね。
それと万が一インターホンが鳴った場合は、玄関ではなくモニターを確認するんですよ」


「うんっ!わかってる!」


「それから───」


「もーっ!!わたしもう17歳だよっ!」



正直、不安だ。

今までもエマお嬢様を留守番させることはあったとしても、やはり毎回心配で仕方ない。



「エマお嬢様、いちばん大事なことがひとつだけありました」


「いちばん?じゃあそれで最後ねっ」


「はい」



スッと腕を伸ばして目の前の後頭部を引き寄せれば、小柄なお嬢様は簡単に体勢を崩してくれる。