「ねー、ちょっと無視しなでよぅ」

 やや上ずって、甘えたような声。

 他人から言わせると、この声ですらも、私たちはすごく似ているのだという。

 ただ、しゃべり方や抑揚が全く違うだけで。

「別に無視しているわけじゃないけど」

「でもなんか冷たいし。なんか、怒ってるのー?」

「怒ってはないわ。ただ、姉さんと呼ぶのをやめてって、言っているよね」

「なぁんだ、そーんなこと。まだそんなこと言っているのぉ? 戸籍上は瑞葉(みずは)が長女なのだから別にいいじゃない」

「そういう問題じゃないでしょ」

「えー。何それ、じゃ、どーいう問題なのょ」

 小馬鹿にしたように、妹の瑞希(みずき)は鼻で笑った。

 睨みつけるように後ろを振り返ると、そこには私となんら変わりない顔がある。

 姉、妹と言っても、私たちは双子なのだ。一卵性双生児。顔も声も、背の高さもほとんど同じ。

 陰キャな姉に、陽キャな妹。

 もう何度も、そんな言葉をかけられてきていた。