私は会話を終了させるために、出されたお茶をぐっと喉に流し込んだ。

「?」

 匂いは確かにいつもの紅茶だった。

 ただ一気に飲んだお茶は、明らかに味がおかしい。

 すぐに口の中や喉、その全てが焼け付くような痛みが走る。

「ゲホっ」

 思わず吐いた物に血が混じる。まさか、毒が入っていたなんて。

 これはさすがに失敗したかもしれない。

「なにこれ、なんでこんなことに? 嘘でしょう」

 ひどい吐き気とむせ込みから、しゃべることが出来ない私を、妹は真っ青な顔で見ていた。

「わたし、こんな、うそだ……。ただ姉さまに嫌がらせがしたかっただけなのに」

 ガタガタと震え、訳の分からないことを繰り返す。私は倒れ込みながらも手を伸ばし、テーブルの上にあったティーカップたちを叩き落とした。

「だ、誰かー! お姉さま、しっかりして下さい。誰か、誰かきて! 医者を呼んでー」

 ティーカップの割れる音で我に返ったようなミアが、倒れこむ私を抱きかかえ、大声で叫んだ。

 遠くから、バタバタと走る足音が聞こえてくる。

「なんでこんなことに、姉さま、しっかりしてください。わたし、わたしは……」

 薄れゆく意識の中で、私はただ考えていた。どこでなにを間違えてしまったのか。

 いやそもそも、あの時点からずっと間違った選択をしてきたのではないのだろうかと。

 ただそれ以外は、ある意味不可抗力だ。

 あの日、私たちが二人とも死に、よりによって同じタイミングで同じ場所に転生をしてしまうなんて、あの時は知るわけもなかったのだから。