旅館に泊まって潜入調査を行い始めて、早三日。特に進展はなく、夜間に誰かが行方不明になることもない。

「せっかくだし、観光にでも行ってこい」

「観光客が観光にも行かずにずっと旅館にいるなんて怪しまれるだろ?」

ツヤとレオナードにそう言われ、昼間はイヅナたちは観光に出かけるようにしている。マオ国の歴史ある遺跡を巡り、神秘的な自然が広がる観光地を写真に収め、ギルベルトたちに渡すお土産を買うためにお店をたくさん見た。

その間、チターゼを見かけることがあったものの、イヅナとヴィンセントが声をかけてもチターゼは聞こえていないかのように振る舞っていた。

「前から薄々思っていたけど、失礼な人だね」

ヴィンセントが少し苛立ちを見せる。すると、エイモンが「ごめんね」と寂しそうな顔をして謝るのだ。

「本当はチターゼもあんな態度を取りたくないし、みんなと話したいと思ってるんだ。でも、気持ちと裏腹の行動を取ってしまうんだよ」