一週間後、イヅナとヴィンセント、そしてエイモンとチターゼは荷物をまとめ、旅行客を装って東の大国へ向かった。

イヅナたちが潜入する旅館があるマオ国は、広大な草原、砂漠、山、湖、川、一万キロを超える海岸線を擁する。人口もとても多く、世界の国の中で一番人口の多い国だ。マオ国の歴史は四千年前からあり、その当時の貴重な建築物や書物が数多く残っている。

列車と船を乗り継ぎ、ようやくマオ国に入国することができた。船から降りてすぐ、エイモンがグッと体を伸ばす。

「やっとついたね〜!」

「はい、移動が思ったより長くて大変でした。早く旅館で休みたいです」

一週間近くずっと乗り物での移動ばかりだったため、疲れが溜まってしまっている。イヅナも体をグッと伸ばすと、チターゼに小声で言われた。

「移動だけでそんなに疲れるほど体力がないなら、任務に来ても邪魔で仕方ないんだけど」

チターゼの棘のある言葉に傷付くも、ヴィンセントがそれに気付いてか、イヅナに声をかけてくる。

「でも、さすが東洋の国だね。建築の造りが僕たちのところとは違うし、何より風がすごく湿気がある。任務じゃなかったら、あちこち観光に行きたいくらいだよ」