「ツムギの薬よ」

「こんな臭いの、飲めるのか?」

 ちょっと楽しそうに言うお父さんに、私は朝からイラッとしちゃった。

「で? 何の薬?」

 問われて、お母さんが、しれっと答える。

「魔女としての能力が覚醒しちゃったんだけど、魔力量が多過ぎるらしいから、しばらく薬で抑えることにしたの」

 えっ!? そこ、正直にお父さんに言っちゃうんだ…。

「おいおい。お母さんだけなら、そういう設定も見逃してきたけど、ツムギまで巻き込むなよ」

 お父さんが苦笑いをした。

 あっ、マズい!

 お母さんが本気で怒ったときの顔をしている。

 お母さんは、お父さんのメガネに手をかざして、何か呟いた。

「え!? 何が起こった? 見えないんだけど?」

 お父さんが狼狽えた。

「魔女をナメないで! いい加減、人の話を信じなさいよ! こっちは大事な娘の話をしてんよ!!」

 お母さんが大きな声を上げた。

「ちょっと、お母さん、何したの? お父さん、大丈夫なの?」