「な、何でもないです。ごめんなさいっ」

 自転車に乗ってたおじさんは少し不機嫌そうな顔をした後、再びペダルを漕ぎ始めた。

「ツムギ、気をつけてよね。猫と会話してるなんて、おかしな子だと思われるわ」

「そうだね。気をつける」

 返事をしながらも、私の頭の中は席替えのときのことを考えてた。

 あのとき、私の魔法の力で、私とハヤト君が隣どうしになって…

 でも、その後、ハヤト君が後ろの席に替わることになって…

 そして、ハヤト君は、サキちゃんと隣になった……

 まさか!?!?

「ツムギ? もしかして、心当たりがあるの?」

「ううん…」

 そうだよ、魔法を使ったところを目撃したわけでもない。

 席替えの件は悪い偶然が重なっただけかもしれないんだし。

 でも、もしも…もしも、だよ? サキちゃんみたいなモテる子が、私と同じ魔法使いだったら…

 そんなの勝てっこないよねっ!?

 ハヤト君、サキちゃんのこと好きになっちゃうのかな……