私はノートを取り出して、カウンターの上に広げ、それから英単語を書き始めた。

 すると、さっきまでの追い立てられるような気持ちが、スーッと消えていった。

 魔法って、怖い…。

「ね、お父さんは? お父さんも、魔…女?? なの?」

「男性の場合は魔女じゃなくて、魔術師って呼ぶわね。でも、お父さんは魔力のない、そういうのとは全く無縁な人よ」

「お母さんが魔女ってこと、お父さんは知ってるの?」

「うーん。知ってると言えば知ってるんだけど…。結婚前に勇気を振り絞って打ち明けたんだけど、まともに信じてもらえなかったわ。『僕も子供の頃、魔法使いに憧れたことがあるよ。学校の掃除の時間に、竹ぼうきに跨って、飛ぶ練習してたら、先生に見つかって怒られたな』なーんて言ってたもの。それこそ、お母さんのこと、厨二病扱いよ!」